【家庭】:出産のことその4

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いよいよ出産です。

骨盤の開いた感覚は決して気持ちの良いものではありませんでした。

脳内に浮かぶのは、カタパルトが開いてなにかがいよいよ射出されようとしているイメージ。

ライジンオーだったかな、プールが割れて中からロボが出てくるアニメのシーンを見たときの
「なんかわからんがおおごと」
を見ているときのドキドキ感。

普段生活していたらありえないところがありえない開き方をしているんだから、これはもう変形といっていいのでは。

人体の不思議に達観に似た思いも起こります。


そうこうしているうちに分娩室に到着です。

というか、普通こんなになる前に分娩室に入るんじゃないの?

いきむとかは、分娩台の上でやるものなのでは?
頭が出てくるまで陣痛室で頑張るってイメージ無かったんですが??

後で知ったんですが、その日はお産ラッシュだったらしく(1日で6人も産まれたそうな)、
どうやら分娩室も押せ押せの状態だったらしいんですよね。
前の人がつかえてたのかな~と今となっては思います。

ベッドに乗せられたまま分娩台に横付けされ、さて助産師さんが次に言った一言、

「移れます?」

( ゚д゚)ポカーン


自  力  で  ?


ERでよく見る「僕の合図で移すよ! 1、2のさんッ!!」とかってのじゃないの? 自分で移るの?


──まあ頑張って移りましたよ。
いざとなったら人間なんとかやれるものです。

「あ、星人さんなにか音楽かけたいっていうことでしたよね。CD、カバンの中かしら......」

そう、分娩時にアロマを焚いたり、好きな音楽をかけられるということで、事前にちゅり星人もかけたいCDを持ってきてたんですよね。

それがこれ。

ビル・エヴァンスのMoon Beams

Moon Beams
Moon Beams
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Bill Evans Trio
Universal Japan (1991-07-01)
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夜寝るときによくかけていた、穏やかで鎮静作用の高いアルバムです。
分娩時にも、これをかければ少しはリラックスできるかな? と思い、チョイスしたのですが
まさかこんなバタバタな状態でとは......。

助産師さんが、カバンの中から取り出したビル・エヴァンスをかけてくれる。
ああ、耳になじんだメロディーが流れ出す。
これでリラックス......リラックス......無理............。

なんかもうあわただしくてどうでもいいわ。音楽に集中できないし。

せっかくのアイテムも台無しです。

色々考えて持ってきても、そんなもの堪能する余裕なんて粉ほどもありませんでした。
それよか分娩台の上で待つ最後の追い込み、そして最後の自分との闘いで頭いっぱいです。

自分との闘い。

それは 会陰との闘い。

会陰......(えいん、と読みます)、部位がどこかはここを見るとわかるかと。

女性なら一度は聞いてビビったことがある
「出産時には会陰切開する」
という恐ろしい話。

男性は初めて聞いたという人も大勢いるのではないでしょうか。

そうなんです。切るんですよ。あんなところを。

お産のとき、そこの皮膚が十分に伸びないと裂けて(!!!)しまうので、
人工的にハサミでじょきんとやるのですよ。
自然裂傷より人工的に切ったほうが傷口がキレイで、縫合した後も治りが早いから、というのがその理由。

とはいっても......
想像しただけでぞおっとしますよね。腕や足の皮膚とはわけが違う、
あんないかにも薄くて弱そうなところ、
想像しただけで腰が引けてしまいます。縮み上がります。男の人だったらキューーーもんです。

出産経験者はよく
「陣痛の痛みが強すぎて、いつ切ったのがわからなかった」とか
「もうとにかく早く出して!ってなるから、いざとなったら平気だよ」とか言いますが、
いやいやアナタ、そうは言ってもコワイコワイ! 痛い痛い!

なので、分娩時の希望を聞かれたときに、
ちゅり星人はなるたけ会陰切開をしたくないと伝えておきました。

会陰切開とはいっても、誰でもかれでも切るというわけではなく、
ゆっくりゆっくりお産を進めて徐々に会陰を伸ばしていければ、
裂けずに上手に産むことも可能だと聞いていたので、その方法に飛びついたわけです。

そう、最後の自分との闘い、
それは 会陰切開せずに、かつ自然裂傷も防いで出産すること。

とはいってもこれが難しいんだった。

その3でも書いたように、いきみたい衝動を逃がすのがとても難しい。
いきみたいからって力任せにいきんでしまえば、当然一気に赤ん坊が出てきてしまうわけで、
そしたらダメージ甚大。
自然に裂けてしまう場合、ひどいと肛門まで損傷が及ぶ場合もあるそうなので、
そんな話を聞いてしまったら、もう頑張るしかないじゃないですか。

難しくても、誘惑に負けてしまったら後でつらいのは自分になる、
そう思ってなんとかゆっくりゆっくり子を生み出そうと心に決めていたのですが、
まあ言うは易し、行なうは難し。

分娩台にあがった時点で助産師さんが言いました。

「もういきまないで大丈夫よ。いきまないようにしてね」

い、いきまないと出てこないのでは......? と疑問に思うも、いきむなというのだから耐える。

──それにしてもこのいきみたい衝動、どうしたらいいのって感じ。
やり場がない。困る。
少しでも腹式呼吸するといきんでしまうので、できるだけお腹から意識を放そうと浅い呼吸を繰り返す。

と、なにやら助産師さん達が足元でなにやら小声で話している。
かすかに聞こえてくるのは、赤ん坊が出てくる向きがちょっと違うとかそういうニュアンス。

ちょっとちょっと、不安になるんですけど!

「星人さん、連絡はご主人にすればいいのかしら?」
「......あの、連絡なら、産まれてからでも、大丈夫、ですよ」(息も絶え絶え)
「うん、でもお産ってなにがあるかわからないからね」

おおおおおおおいい!!!

そうこうするうちに、別の助産師さんから
「はい、いきんで!!」の指示が。

なんだかわけがわからないままに、言われるままにいきむ。
力の限り超いきむ。

「はい、力抜いて~~。肩が出てきた。もういきまないで大丈夫よ」

体の力を抜いたその瞬間、

ずるんちょ。

まさにそんな感じで、なにか温かいぬるぬるしたものが足の間から出てきました。

......

......

 .........

      ......


ふぎゃあああ、ふにゃあああという声が足元から響く。


──泣いてる。


赤ん坊が泣いてる。


............


 あれ...


泣き声............     産声...... 
      
          
「産まれましたよ!」


「...で、出たぁ~~」


出産後、思わず口をついて出た第一声がこれです。

初めて赤ん坊と対面した母親はよく
「やっと会えたね」とか「生まれてきてくれてありがとう」とか言うらしいですが、
ちゅり星人の場合、
「出た~~」の後に、赤ん坊と対面したときに出てきた言葉は

「きみが中に入っていたのか」でした。


──とうとう産まれました!


ほっとするのもつかの間、今度は分娩台に仰向けになるように言われ、
赤ん坊を産み落としたばかりだというのに、またもや自力で仰向けになる。

十何時間ぶりに仰向けになりました。
我ながらよくもまあずっと四つんばいでい続けられたものだ。

力を使い果たしたのか、手足がガクガクと震えています。
生まれたての小鹿のように震えて、まったく力が入らない。
同時に、ランナーズハイなのか、なんだかやけに陽気な気分に襲われ、
あははあははと笑いがこみ上げてくる。

しかし出産はこれで終わりではないのです。
後産(あとざん)という、赤ん坊が出た後の胎盤とか付属物をもう一度出す作業が残っているのです。

といってもこれは助産師さんがお腹をぎゅーぎゅー押して排出させてくれました。
痛かった。

「子宮を収縮させるために、促進剤をもう少し入れますね」

産んでからもまたあの陣痛に苦しめられるのかとひやっとするものの、
痛みはもう感じず、一安心。

これも後で知ったのですが、
どうやらこのとき弛緩出血という、子宮の収縮が悪いために多量出血を起こす状態になっていたらしく、
通常だと200~250ml、500mlを超すと大量といわれるところを、800mlほど出血していたらしいです。

と、ここまでのお産はすべて助産師さんがしてくれたのですが、
ここでドクター登場。

「会陰のところね、裂けちゃったから縫いますね」

げげーん、裂けてたの......。

正直わかりませんでした。

「じゃ縫うよ」

瞬間 会陰部に走る痛みといったら!!!

痛い、いたい! なにこれ麻酔かかってんの!??

痛いと訴えると先生、
「ここはね、麻酔かかりにくい場所なんだよね」とさらり。

しかしこれは麻酔かかってるとはとても思えない痛み!
というより針がプツップツッと刺さって、糸を引っ張ってまた抜けていく感触まではっっっきりわかるんですけど!!

痛い痛い! 産むより痛い!

「手早くお願いします!」

思わず先生相手にそんなことを言っていました。

縫合が終わったあと、あたたかいタオルで体を拭いてもらって、出生時チェックが終わった我が子と対面。

カンガルーケアといって、裸の赤ん坊を裸の胸に抱いて、初めての授乳。

生まれたてのくせに、胸に近づけるとちゃんとおっぱいを捜して一生懸命に顔を動かす我が子。

人間ってすごい。

ふやふや頼りなく動く子供。
ちゃんと温かく、生きてます。

2008年5月27日、12:12、
3220gの女の子がこの世に誕生しました。

生まれてまず思ったのが、
自分を粗末にするような子には育って欲しくないということ。

そしてこの子の未来が光り輝くものでありますように との、祈りにも似た思い。

どんな人間も生まれてきたときはまだなんの色も付いてない。

どんな人間になっていくかは、すべて育て方次第ということ。
これから責任重大です。

そんなわけで、出産の話は終わりです。
その1からその4まで、おそろしく長文、読んでくださってありがとうございました。
感謝。

コメント(1)

 男性として私は率直に、お産に挑む女性に本気で恐れ入ります。初子以降になると体力も余裕が出来、出産時間も初産の通常分娩より半分ほどになると伺ったことがありますが、それでも破水から後産までほぼ半日近くですものね……。今でこそ産婦科医術が発達しましたから出産による母子生命の危険性も著しく低下しましたが、ほんの50年前までは文字通り命がけの行為だったんですからね……。
 人生40年の時代にすればお産は十代女子のお仕事、十三女一人前といわれていたくらいですから、つまり実年齢は十二歳。うはー、本気で恐れ入ります。
 浅井長政に嫁いだお市の方は輿入れ時の年齢二十歳。当時からすれば晩婚ではありますが、凄まじいのは輿入れ後です。彼女は晩婚とはいえど二十の若さで浅井長政に嫁いでから六年間、小谷城落城までに実に五人の子を成しているのです。六年間に五子出産ですから、懐妊しては出産して、すぐに懐妊しての繰り返しですね。本気ですごー……って思います。
 浅井長政とお市の方の間には、二子の男子がおりましたが、長男の万福丸はお家再興の可能性を潰すため、関ヶ原にて磔にされました。次男は出家させられ、残ったのはあの高名な、長女茶々(淀君)に代表される三姉妹です。
 その中で不遇な遍歴を重ねながらも最終的に二代目徳川将軍秀忠(この時点で江は再々婚)に輿入れした江は、前夫との子を完子は姉の茶々に引き取ってもらい、実に江戸城にて七児を出産しております。その中で特に光るのは、関白豊臣秀頼の正室である千姫、時代将軍である徳川家光、和子(後水尾天皇中宮、明正天皇母)です。
 実の所を申しますと、「徳川三百年で正室が継嗣を産んだのは秀忠-江夫婦のみ」なんです。後の本家の将軍はお手つきが多かったモノですから、「玉の輿」の語源となったといわれる八百屋の娘「お玉」がいきなり将軍の側室となり、あまつさえ産んだ子が次期将軍となってしまった事だってあるくらいなのですから。
 というわけで、現在では一子出産するのに青色吐息であるにも関わらず、一年おきに出産ってどういう事ですか? しかも十代の女性が主。……凄まじいですねぇ……。
 生後百日で命名にて初宮参り、生後百日にお初食い、七五三の無病息災成長祈願に節句祝い。やれることはバンバンやっていきましょうー。
 ともあれ、出産お疲れ様でした。息も吐かせず育児に突入ですが、即死するような事を避ければ、案外と立派に育つモノなので、気負わずいってください。普段はのびのびとさせる代わりに、絶対的に駄目なモノはきちんとビッチリ叱る。そして反省してきちんと謝ることが出来れば、褒めてあげる。きちんとそういうサイクルが出来ていれれば、案外と何とかなるものではないでしょうか?(気楽すぎますかね?) 幸田文曰く「親子の絆の深さとは、如何に生きる術を多く伝授されたかに依るモノだと思う」です。沢山、話をしてあげてください。
 しかし、出産の恐ろしさをなまじ知っていると、本当にお産したお嫁さんは奥に入って欲しいですねー。出産中毒ですとか肥立ちの悪さですとか、怖くて堪りませんモノ。
 それでは、奥様にご自愛くださいとお伝え下さいませ。

     

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しらいしわたる

しらいしわたるはCGアニメーター&CG業界料理研究家です。
2006年3月まで精鋭クリエーター集団タツノコVCRに所属
2009年8月までスクウェアエニックスのムービーチームであるヴィジュアルワークスに所属
2010年2月まで東映アニメーションにてCGアニメーターとして所属
2010年3月よりフリーで活動中

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